元浅草に住む友人の恩田や近所の手伝いもあって、父の葬儀も無事に終えた。
父に相談しようかどうか迷っていたままの仕事があった。美輪さん演出の「枯葉の寝床」で共演したロッキーからの依頼で、これはどう考えても二度目の清水の舞台だ。飛び降り方次第ではこの先の人生が大きく変わりそうで、るみちゃんとも真剣に話し合う。
「リョージィにショーパブのショーを作って欲しいのよ。ねえ、一度、僕が手がけたショーを観にきて」と言われ、るみちゃんと出かける。チリチリロングヘアーのロッキーが褌一つで、高名な振付師と音楽にあわせ踊っている。観客は芸能人とテレビ関係者とおぼしき人たち。
これはやばい!この世界観は付いていかれない。さっさと帰ってきたが、すぐに電話がかかる。ロッキーは簡単に離してくれない。「あれは開店祝いのスペシャルで、普段は普通のショーなのよ」
普通になってもたかがしれている。
るみちゃんは言った。
「では普通のショーとやらを観せていただいて、断る理由を考えましょうよ」
そう、そうしよう。
いわゆるショーパブのショーを観るのは初めてだった。ロッキーは音の繋ぎがうまく、良く出来たシナリオのシーン替わりのようで、一時間弱があっという間だった。
その日も翌日が早いのでと言い訳し、家へ帰り早速話し合う。
「ショーの構成の訓練にはなりそうだけれど、あの空気感がなぁ。るみちゃん、どう思う?」
「芝居・歌・ダンス、この中で龍史くんが一番上手いのはダンス、だから、これを機会に振付にチャレンジする。音楽が大好きな貴方が繋いでいく音の構成はちょっと見てみたい。自分が思うよりリーダーシップのある龍史くんが演出を学ぶのもいいのでは?」
「やってみたらってこと?」
「だって、出るわけではないでしょ?」
「たしかに仕事を待つ間、構成・演出・振付を学ぶ場と思えばいいね!」
翌日、ロッキーと会う。彼はシャワーの後の香りを振りまきながら
「僕ね、この仕事、リョージィには向いていると思うの。キャストも半ば決まっているけど、出て欲しい子がいれば連れてきて。要望があればなんでも言ってね、出来るだけのことはするから。何といってもリョージィと一緒に出るメンバーだから」
「(一瞬間があって)ぼ、ぼ、僕も出るの!?」
「だってリョージィがいないと締まらないでしょ」
「ぼ、僕がニューハーフの皆さんと一緒に舞台に立つの?」
「ニューハーフは二人だけ。あとはリョージィや僕と同じ普通の男」
「さ、最初にそれを言ってよ」
「言ったら断るでしょ、、、ねェ、劇場ではないけど、お店の周りを何周もお客様が囲む、そんな日も夢じゃないわ」
家に戻って又、話し合いである。出演もすると聞いて
「あ〜やっぱり!そんな気がしていたの、、、でも、仕事を待ってバイトをするより、その時間を好きな舞台の創り方を学べばいい。四季や文学座では決して教えてはくれないもの」
とるみちゃんは笑う。
「そうだね、どんな環境でも僕らしい舞台を創ればいいんだよね。新たなエンターテインメント、東京のムーランルージュって、とこかな」
「どんな場所でも、今までに無いヒット作を創れば認めてもらえる。龍史くんなら出来る!」
「ありがとう!そうなると、かっこいい若い男の子も必要だし、プロのダンサーも欲しいな」
お調子モンの僕は、るみちゃんの後押しですぐに、その気になる。
「それでそのお店の名前は?」
「新宿の『黒鳥の湖』だって。まずは黒鳥のオディールのソロから、なんてね!」
お店のウェイター兼で大学生を含む男子3名、僕が四季をクビになった後で一緒に踊ったネバさん(コンテンポラリーのダンサー)にも出演を依頼した。
出演者と話し、それぞれ何をさせたら面白いか、かっこいいか、どう笑いをとるか、たとえ短いショーでも感動は必要だ。今までにない頭の使い方にはすぐに慣れた。
何を見ても聞いても、そのショーに結びつけてしまう。
身体中を突いてアイディアを叩き出す日々が、中村龍史で紡いでいく人生が、始まった。
💌💌語り手のつぶやき💌💌
今回は、2話を同時に更新します。
この黒鳥の湖で打ち合わせをし、今までになかった新たな仕事も始まります。
中村の作り出す世界がお好きな方にとっては、これからが面白くなっていきます。
是非、続けてお読み下さいね。 留美子拝
