「オチ」
7月だというのに寒っ!!なんだこの寒さはっ! ステージナビ読者の諸君、体調崩してないか? 自律神経大丈夫か? 前立腺大丈夫か? とまあ、俺くらいの年齢の人間が集まると、必ず病気や薬の話になる。にしても今年の天候不順にはついていけない。だがこの天候不順に対して負けてはならぬ、決して屈してはならん。知恵を絞って乗り切ろうではないか。雨にも負けず、風邪にも負けず、天候不順にも負けない人間でありたいっ。人間力、人間力、人間力、よしっ!
先日、「コーラスライン」ならぬ「コーラス9(ナイン)」というミュージカル、というより軽演劇ミュージカル風を創った。脚本はうちの家内が、一人一人に当て書きをしてくれた。演出と振り付けは俺。出演者は日本のトップアーティストのバックコーラスを生業(なりわい)としてきた猛者たち。芝居をするのも初めてならば、毎日、演出家と面と向かって仕事をするのも初めて。常に自分達の事は自分達で決めてきた熟女たちである。
ちょっと演劇では考えられない、稽古模様の数々。例えば、演出家の眼の前で、
C1 ねえねえ、ここどうする?
C2 これでいいんじゃない。
C3 ダメよ、あそこがこうなんだから、こうしないと。
C4 でもさ、こっちの方がかっこいいよ。
C5 昨日の振り付けは確かこうだった。
C6 そうそう、でもこっちの方がやりやすいよ。
C7 そうだねそうしよう。そうしよう。
(たまりかねた演出家が)
演出家 おいっ、それは君たちが決めることではないっ!
C達 はーい。でも中村先生が黙っていたんで、自分達で考えていいのかなーって。
演出家 俺が黙っている時は何かを必死に考えている時。わかった!
C達 へーい、わかりやした。
全てに対してこんなやりとりであった。
彼女達の強みはコーラス、いわゆるハモること。これをミュージカルに活かすにはどうしたら良いのか。いろいろと試してみた。
全員でため息をつくシーン。ちょっとそのため息ハモッてみて、俺が言うと……見事にため息がハモる。ため息がハモる? 聞いたことない。でもすぐハモる。この才能すごい。
これこそミュージカルだ。多分世界中でもため息コーラスはやっていない。
オリジナルミュージカルはこういうところから始めなければいけない。本の骨格と、演出家のアイデアと、演者の技術才能でオリジナルミュージカル「コーラス9」は生まれた。
今回もいろいろな方が観に来てくださった。その中でも嬉しかったのは澤田隆治さん(推定年齢八十代後半)が足を運んでくださったこと。澤田さんといえば関西では泣く子も笑う、喜劇界の重鎮。
我々の世代では子供のころ、澤田隆治プロデュース「てなもんや三度笠」「スチャラカ社員」などのテレビ番組でずいぶん笑わせてもらった。俺が小学校高学年から中学にかけて、海外のギャグドラマ(?)がずいぶん入ってきていた。「ちびっこギャング」「アイ・ラブ・ルーシー」「じゃじゃ馬億万長者」など、その中でも澤田さんの創るコメディーは秀逸だった。
話はちょっと戻るが、その澤田さんが3月のクールジャパン大阪パークTTホールのこけら落とし公演「energy」を東京からわざわざ観に来てくれた。前年一度お会いしただけなのに有難い。
開演前に挨拶できなかったので、幕間に挨拶に行った。すると澤田さんがひと言、「2、3オチがなかったな」。「あ、はい」と俺。「大阪人はオチが大好きやから、オチをつけんといかん」。
大先輩からの助言は、嬉しい。
その澤田さんが「コーラス9」も観に来てくださった。終演後挨拶に行くと、ニコニコ笑いながら「おもろかったわ」とおっしゃってくれた。それもそのはず「コーラス9」は誰もがわかる大きなオチをきっちりとつけたから。
それは何かというと、言えない言えない言っちゃあおしまいだよ。でもオチがわかった上で、もう一回観るのもオチ(ツ)なもんかも。
中村龍史

