2017年 ACT.2

「富良野贅沢三昧創作活動!」

明けましておめでとうございます! 今年も よろしく!

僕は今、北海道のおへそ、富良野に来て居る。
ちなみに僕は世田谷区のおへそに住んでいるが、そんな事はどうでもいい、余談だ。
何故、普段でもマイナス20度を超え、鼻毛も凍る北の大地 に居るかというと、
ここで倉本聰さん (「北の国から」「風のガーデン」etc.etc. etc.の超有名脚本家)と一緒に
「走る」という舞台作品を創作しているからだ。

この「走る」という作品、タダモノではない。
倉本さんが、マラソンランナー有森裕子のドキュメンタリー番組を見ていて「演劇の感動はスポーツの感動に勝てないのか!」という思いから創られた。42.195キロを走るただのマラソンではなく『人は何のために走るのか』をテーマに、1年間を通して北海道の原野を走り抜ける時のマラソン、人生のマラソンだ。過去の作品に例えて言うなら、走る「コーラスライン」ってとこだろうか。

役者は舞台上で「その場走り」と言って、走っているのに移動しないという特殊肉体技術を駆使する。
この走り方は陸上の専門家に言わせると、下半身の筋肉に非常に負担のかかる走り方だそうで、普通に走るだけでも大変なのに、走っているのに体は移動しない、つまり無理して移動させないわけで、僕は「無理強い走り」と呼んでいる。その上走りながら台詞を言うわけだから、役者の技量、身体能力はかなりのレベルを要求される。富良野塾の初演ではケガ人が続出したそうだ。そこで、一昨年のオーディションで勝ち抜いたツワモノ達を、去年1年間ワークショップでケガをしない体に鍛え上げた。それでも今日現在、数人の脱落者が出ている。
それほど出演者にとって過酷な舞台で、1ステージの運動量はサッカー1試合分に相当すると言われている。しかしサッカー選手は試合中にベラベラ喋りながら戦っているわけではないし、15分間の休憩もある。こちらは休憩なし95分。そんな 超過激的舞台作品をここ富良野から全国に向けて発信すべく、日夜凍った路面をナチュラルドリフト走行しながらホテルと劇場を行き来する毎日だ。

僕が初めて倉本さんに会ったのは一昨年の初夏、「一緒に面白いもの創ろうよ、早くやらないと僕死んじゃうから」。その言葉が面白くまた嬉しく、二つ返事で引き受けた。僕を選んでくれたことも嬉しかったし、何より大先輩と仕事をしたかったからだ。

今、稽古は佳境に入っている。出演者は東京オーディションメンバー30数人、元富良野塾メンバーと札幌オーディションメンバーで10人、計40数人。東京合格組は芝居というよりも、
「走る」事に適した身体能力を持ち、なおかつキャラクターを重視し人選をした。倉本さんが当て書き(出演者の個性を見ながら脚本を仕上げていく)をすることが前提だったので、個性重視のオーディションだった。無名俳優にとって倉本聰に当て書きをしてもらう、なんとも贅沢な話だ。ただ本格的な芝居経験者が少なかったので一抹の不安はあったのだが、その不安は忘れた頃にやって来た。富良野に来て1週間、贅沢なことに劇場の舞台を使い本番同様に、照明、音響を入れてのリハーサルが続く。通常、舞台の広さもとれない稽古場でのリハーサル、劇場で2~3日の舞台稽古で本番を迎える東京組出演者達は、走る量も、声量も想像を上回り、当然のごとくエネルギーを使い果たす。こんなはずじゃなかったと思う頃には時すでに遅し、ヘトヘトになって体がバテバテ、故障者が出る。残念ながら東京に戻らなければならないメンバーが3人も出てしまい、今更ながら過酷な作品であるということを皆認識したはずだ。

しかし倉本さんも僕もそんな事は想定内、今日も元気に稽古をしている。

富良野初日まであと1週間。スタッフ、出演者、最後まで気を抜かず風邪ひかず完璧な「走る」を全国にお届けしたい。この作品はおじいちゃんと孫、お父さんと息子、老若男女で楽しめる作品ですから、どうぞお楽しみに。

ちなみに東京公演は2月2日から5日まで池袋サンシャイン劇場。ご来場お待ちしています。

さて僕はというと、もう富良野生活が20日を数える。人生において20日間も雪の中で暮らすということはいまだなく、初めの頃はT Vドラマ「北の国から」の純くん (両親の都合で都会から富良野へやって来て、電気や水道のない生活を余儀なくされる、推定10歳) の心境が少しわかった。まあ純くんと僕とではあまりに環境と年齢が違うけれど、東京から富良野に来た、という事だけは一緒!?

富良野CS(クリエイティブシンジケート) から1台車をお借りして僕の足代わりに使わせてもらっている。ホテルから劇場(富良野 演劇工房)までは車で5分程度だが歩くわけにはいかない。何しろ雪道、雪山道、雪峠道で、しかも東京に降る雪とは比べ物にならない程の大雪、粉雪、どか雪、凄雪だ。

富良野に来て3日目、猛吹雪に襲われた。稽古中に舞台監督が倉本さんに、「ちょっとヤバそうです」その一言で夜の稽古は中止になり、外に出ると吹雪いてる、吹雪き過ぎてる、脳裏に浮かぶのは何か映画の1シーン。眠るな!! 眠ったら死ぬぞーーッ!別に眠くはなかったので車に乗りこみ、発進したはいいが雪で道がわからない、視界約5メートル、
一面真っ白! ここはどこ?私は誰?道はどこ?眠っちゃダメ!眠くはない!富良野C Sのスタッフが、露払いならぬ雪払いで、吹き溜まりの道を先導してくれた。
「駐車時には、ワイパー(雨避けガラス掃除棒)は上げといてください。サイドブレーキは上げなくていいですよ。みんな凍っちゃいますからね」。話には聞いていたが、慣れるまで2、3日かかった。毎朝、フロントガラス、リアに雪がこびりついていて、粉雪だから取り払うのは簡単だけど、『ガラスに凍りついている氷』をゴシゴシ削り落とすお約束の作業がある。かなり力が必要で、北国では車を発車させるまでが一苦労なのだと、又、思い知らされた。

そんな富良野生活もあと1週間強、なんだか寂しい、雪を口一杯に頬張りたいくらい寂しい。雪道は危険だけどナチュラルドリフトは楽しい。持病のため週4回富良野協会病院通いはあるけれど、深夜0時就寝7時起床、9時疲労回復目覚めの温泉、13時から22時まで劇場で音響、照明付き稽古。東京ではありえない贅沢三昧創作生活。

舞台関係者の皆さま!!是非富良野で合宿稽古お勧めです。雪の中の集中力は半端ないですよ!

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